作文「やくそく」の紹介

今回は皆様に読んでいただきたい作文が一般社団法人 日本自閉症協会の機関誌「いとしご」(2017.5月号No.164)にあり紹介させて下さい。

その作文は世界自閉症啓発デー2017シンポジウムのテーマで使われたものだそうです。
小学生の益田幸奈さんはシンポジストとして出席されわたしの二番目の兄は、自へいしょうです。おしゃべりはできないけれど、いつもわらっている和音兄ちゃんです。という書き出しで始まる作文「やくそく」を読まれたそうです。

スーパーではぐれたら、わたしがさがしに行きます。チョコレートコーナーかバームクーヘンコーナーの前でよく見つけます。とつぜんキーキーと大ごえをだしてあばれることがあります。でもそういう時は、何かりゆうがあるので、母とそれを考えます。お兄ちゃんも大へんそうだけど、わたしもつかれます。そんな時に母が話してくれました。

 「和音兄ちゃんはね。生まれてくる前に、かみさまとお話したの。つぎの人生は、思いどおりにならないことが多いよ。ごかいされることもあるよ。たすけてもらうことばかりだよ。でもきみならやれると思うよ。どうするってね。そしたらお兄ちゃんはね、やってみますってこたえたんだよ。あとね、うるさい妹もいるけどねって、言われたんだよ。」

と書き進めています。

青いアジサイの花

この作文は私たち障がい児者のいる家族ならばきわめて当たり前の日常の様子です。ただし、何か困った事(問題行動)があったときに「障がいがあるから仕方ない」と諦めたりやり過ごしたりしてしまいがちなところを、お母さんがお兄ちゃんにはその行動を起こすにはなにか理由があっての行動のはずだからと妹にお兄さんの気持ちになって考えることを教えています。お兄ちゃんの思いやその行動の意味を分かってあげようと、寄り添おうする努力を惜しまないところは、私の琴線に触れたところでした。


私たち支援者にはこの視点がとても重要です。そして、彼らはその視点を持っている支援者を頼りに生きることを楽しむことが出来ているような気がします。そして、同様の視点を持つ理解者が地域にも広がったら、彼らはどんなに生活しやすいことでしょう。
差別禁止法、虐待防止法などの法律が整備されていますが、「神様に人生は思い通りにならないよ。誤解されることもあるよ」と言われても「やってみます」といって、生まれてきたお兄ちゃんたちのような障がい児者が幸せに暮らしていける世の中になることを願っています。

--コラム執筆--

社会福祉法人東郷ひなた 理事長 笹野眞智子(ささのまちこ)

ウィリアムズ症候群の息子と東郷町で暮らす。 息子が保育園の時に町内に住む障がい児の保護者で自主グループ(親の会)を発足。 息子小学校4年生の時にウイリアムズ症候群の仲間と、親の会を発足。 東郷町知的障害児者連絡協議会(知障連)を町内の他団体と発足。 H17年心療内科心理職で勤務時に行動療法・応用行動分析療法を学ぶ機会を得る。 その後、行動療法学会、行動分析療法学会、発達障害学会の学会員となる。 平成21年知障連の会員の有志とNPO法人ひなたを設立。 平成30年社会福祉法人東郷ひなたを設立。

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